野球じゃないんですけど、ソフトボールの話。
オリンピックのソフトボール日本代表が、2021年7月25日にカナダ代表と対戦しました。
カナダは世界ランク3位、日本は2位。
ランクは日本が上とはいえ、誤差とも言えるレベルです。
日本が勝てば銀メダル以上が確定する試合。
この試合を子供たちと…あと父親と一緒にテレビ観戦しました。
父親が言います。
「若いピッチャーがすげーぞ。」
ふーん、そうなんだ。
39歳上野由紀子が当たり前のように投げている
上野が投げている姿を見ると、なぜか涙が出て鳥肌が立つ39歳のおっさんは私です。
— ぼんだ (@bonda_yakyu) July 25, 2021
なんか涙出ましたね。
上野が五輪に初参戦したのは2004年アテネ。
ただ、その時の実質的なエースは高山樹里選手。
恵まれた体格の高山選手に対し、上野はぶっちゃけなんか細いねーちゃんやんみたいな。
本当にすごいんかいな?と思ったら、世界でも恐れられている好投手とのこと。
実際に投球を見たらすんげぇ。
そして、本当に世間に名前が知れ渡ったのは2008年北京五輪でしょう。
最後の3試合を1人で「413球」投げきり、見事に金メダルを獲得しています。
ところが、ソフトボールは「世界的に普及しているとは言いがたい」として、12年ロンドン、16年リオデジャネイロ大会五輪競技から除外されてしまいました。
当時、30歳に差し掛かろうとする上野選手にとっては、モチベーションの維持が相当にきつかっただろうと想像します。
だって、30歳を超えてくると体力的には間違いなく下り坂です。
経験や技術で円熟味を増してくるスポーツ選手はたくさんいますけど、そこに体力が加わったらもっと活躍できるのは間違いないはず。
オリンピックが全てではないとはいえ、大きな目標の1つだったことは間違いないでしょう。
そんなモチベーション維持がきつかったであろう時期を乗り越え、さらに1年の延期を乗り越えて、東京五輪で一時的に復活したソフトボールの大舞台で上野は冷静に、かつ淡々と相手バッターを討ち取っていきます。
相手のバット(金属)をへし折る
上野の豪腕は全く錆びついていませんでした。
2回1死までノーヒット、フォアボールなしのほぼ完璧な立ち上がり。
2回1死から打たれたヒットで出した走者を背負っての投球。
そんな、場面でのことです。
フルカウントから投じた速球に、相手バッターがスイングしなんとか当てますが、打球は力なくピッチャーフライ。
上野が捕って素早く一塁に送球しダブルプレーに。
そんな上野の顔には、ダブルプレーの嬉しさとは別の驚きのような笑顔が…
なんと、相手バッターのバットをへし折ったのです。
ソフトボールって木のバットじゃないんですよね。
金属ってか、カーボン製のバット。
それにしてもバットを折るとは、凄まじい球威です。
上野がバットを折ったのは実は2回目。
2006年、世界女子ソフトボール選手権大会のギリシャ戦でも折っていたそうです。
すごすぎやろ…
相手投手も負けず劣らず素晴らしい
カナダの先発グロンウェゲン投手も好投手でした。
- 球威
- コントロール
- 緩急
- 変化球
素晴らしい。
日本が打ちあぐねるのも納得の投球です。
そして守備も堅い。
そんな息詰まる投手戦に上野も負けじとスコアボードに0を並べます。
上野から後藤へ継投
力投の上野から後藤への継投。
いや本当にナイスピッチでした!
そしてこれが噂の「若いピッチャーがすげーぞ。」ってやつか。
サウスポーの20歳。
第一印象は、サングラスがエリックガニエみたいでカッケーなと。
この後藤選手の投球がこれまた素晴らしかった。
球も速いが、コントロールが正確。
「球のキレ」が良い。
球のキレって具体的になんやねんって声が聞こえてきそうですが、私は「コントロールの良い球」だと思っています。
- コントロールが良い
- 狙ったところに投げられている
- 頭でイメージした動きが体とシンクロしている
- 球に理想的な力の伝え方ができている
だと考えているからです。(素人の思考です)
そんなことはどうでもいいんですが、この「キレのある球」で三振を取りまくります。
7回表を三者連続三振。
裏のサヨナラに向けて完璧な投球で弾みをつけます。
7回裏に日本サヨナラのチャンス
三者連続三振の流れをそのままに、守りの硬かったカナダにミスもあって一死満塁。日本は絶好のサヨナラのチャンスを迎えます。
一死満塁サヨナラのチャンスは2番市口選手。
良いあたりでしたがセカンドライナーで二死満塁。
なんか嫌な流れ…
続いて、打席には3番内藤選手。
際どいコースにしっかりと食らいつき、三振してもおかしくないようなコースの素晴らしい投球を、これまた素晴らしい技術と執念でカットします。
そして8球目…
…
球威に押されたか、残念ながらファースト内野フライに打ち取られアウト。
押し出しでもサヨナラになる場面で、カナダのローリー投手もナイスピッチでした。
いや、本当に名勝負。
…
でも、すげー嫌な流れ。
それでも後藤は全く動じない
チャンスを作りながらも決めきれない日本。
そして延長タイブレーク(無死2塁から始まる)。
相手のエラーに付け込めなかった…これはマジで嫌な流れです。
ところが20歳の後藤投手は、前の回以上のピッチングを魅せ、あっさりと三者連続三振、前の回から六者連続三振をやってのけます。
「タイブレークのランナーなんて三振取れば関係ないでしょ?」バリの圧巻の投球。
すごすぎ。
運命はキャプテンのバットに託された
後藤投手の好投に応えるべく、日本はその裏に再びチャンスを迎えます。
タイブレークは、裏の方が基本的には有利。
相手の得点に合わせて作戦を変えられるからです。
表のカナダは無失点だったので、裏の日本は一点さえとれば勝利の場面。
4番の山本がしっかりと送りバントを成功させ、一死満塁。
1点入ればサヨナラの場面ですから、故意四球(敬遠)2つで1死満塁の場面が再び訪れます。。
打席にはキャプテンの山田選手。
イチローを彷彿とさせるフォームから、3球目を狙いすましてセンター前に運び見事サヨナラ勝ちをおさめます。
俺的MVPは上野投手
後藤投手はもちろん良かった。
2番の市口選手はシングルヒットにセーフティバントの2安打と盗塁でしっかりと相手にプレッシャーを。
キャッチャーの我妻選手は強肩で盗塁を刺して上野を援護。
サヨナラタイムリーの山田キャプテンも、もちろん素晴らしかったです。
でも、カナダも本当に良いチームでした。
日本もカナダもすごく良いプレーが多くて、点差以上に面白いナイスゲームでした。
そんな中、やっぱり印象に残ったのは上野投手。
39歳の投手が躍動するって本当に素敵でした。
なぜなら、私が39歳のおっさんだからです。
俺も頑張らないとな。
7月27日 20時から女子ソフトボール決勝はじまります
がんばれ!女子ソフトボール!
がんばれニッポン!
追記:金メダル獲得!
見事にアメリカを破って金メダルを獲得しました!